大盗の為に積みし者

(授業前の素読 荘子三十四 胠篋篇第十)
将に篋(つづら)を胠(ひら)き嚢(ふくろ)を探り匱(ひつ)を発(ひら)くの盗の為にして守備を為さんとすれば、
すなわち必ず緘縢(かんとう)を摂(おさ)めて扃鐍(けいけつ)を固くせん。
此れ世俗の謂(い)わゆる知なり。

然れども巨盗至れば、則ち匱(ひつ)を負(せお)い篋(つづら)を掲(もちあ)げ嚢(ふくろ)を担(にな)いて趨(はし)り、
唯だ緘縢扃鐍(かんとうけいけつ)の固からざるを恐る。
然らば則ち郷(さき)の謂わゆる知なる者、
乃(すなわ)ち大盗の為に積みし者ならずや。

【大体の意味容】
いま、人目を忍んでこっそりと葛籠(つづら)をひらいたり袋の中をさぐったり箱を開けたりするようなコソ泥に用心して守備を固めようとする。
すなわちその場合は必ずその袋や箱に縄や紐をしっかりとかけて、鍵も固く鎖(とざ)すであろう。
これは世間でいうところの知恵である。

けれどもスケールの大きな大盗賊がやってくると、その箱ごと背負い、葛籠(つづら)ごともち上げ、袋ごと担(かつ)ぎ上げてしまう。
そのまま走り去って、むしろこれらに縄や鍵がしっかりとかかっていないかどうかを恐れる。
(彼らにしてみれば走り去る間に縄がほどけ、鍵が外れて中身がこぼれ落ちる方が困るからだ)。

こうしてみると、前に泥棒を防ぐ知恵だと思っていたことが、なんとより一層の巨悪な犯罪を手助けしてしまっていたことになるのではなかろうか。

【お話】
すごいぞ荘子!
大きな権力や財力を持った輩がそのまま巨悪としてうごめきだしたらどういうことになるのか、スパッと言い当てています。
歴史は繰り返すのでしょうね。
おそらく二千年以上前から同様のことはあって、それが現代にもそのままぴたりと当てはまっています。

事例は本当に夥(おびただ)しくあるのですが、そうですね現在進行形のものとして、日本の郵政民営化を取り上げてみましょう。

2001年に小泉純一郎内閣が発足すると、その後、国営で行われていた郵政三事業〈郵便局、郵便貯金、簡易保険〉を民営化、つまり民間企業にしようという動きが加速しました。

かんたんに言うと、国が経営している間は、公益性(みんなの役に立つこと)を重視して、多少の損はあってもそのまま仕事していたのですが、民間企業にすると、国が保証してくれないので、儲かることはどんどんするが、儲からないことはやめるという動きになります。
田舎の人口が少ないところの郵便局は儲かってないので、職員に給料を払うと損をするということでつぶしてしまう、といった流れです。
その土地の人々にとっては困りますが、こうして「無駄をなくす」という理屈で「民営化」は正しいこととして進められました。

これが実は、小泉内閣独自の政策ではなく、アメリカからの要望(実は命令)で進められた政策であるのです。

日本人はまじめにコツコツ貯金します。
また家族のために自分が死んだ後に財産を残す生命保険や、子供の高校・大学の学費を確保するための学資保険などに加入して、毎月コツコツと決まった金額を納めます。

日本の郵便局は、民間の銀行のような我利我利亡者(がりがりもうじゃ)の印象はないので信用されて、なんと350兆円もの資金を集めています。これが、外国系資本の企業(=外資)、特にアメリカ企業に狙われたのです。
1994(平成6)年から始まった「年次改革要望書」であげられていますが、要望というよりは実質的に命令というのがふさわしいものです。

郵便局が民間企業になれば、その企業の株を買うという形で「大株主」つまりその企業の「所有者」になれる。
350兆円もの資金の使い方について、我が物顔で指示出しできる。
人々がまじめに郵便局にお金を入れれば入れるほど、そうした株主たちは笑いが止まらない、といった状況です。

当初、郵政民営化をしても、日本政府だけが株主になる、つまり実質国営の時のような安定性を維持するという建前でしたが、現在は日本政府以外にもいろいろな企業が株主になってきています。やはり、外資の持ち株比率が次第に大きくなってきています。
ロスチャイルド財閥系やモルガン財閥系の銀行が目立ちます。
これら外資が筆頭株主になってしまったら、本当に郵便局はどうなってしまうのか、予断を許しません。

私たちが貯蓄をしながらまじめに生活をしていること自体、巨悪に利用されている可能性がある、そのことは意識しておいた方がよさそうです。

現在、コロンナウィルスによる肺炎の地球規模での流行が懸念され、現実化しつつあります。
これさえもビジネスチャンスにしている人々が大勢います。

目立つのは、金(ゴールド)の価格の上昇や、仮想通貨ビットコインの値段の急騰です。

中国を中心に多くの企業が業務停止に追い込まれています。
そんな状況で利益を確保するためにもビットコインに投資しようというわけなのでしょう。
そもそも市場に出回るコインや紙幣自体に、ウィルスがくっついているかもしれませんし。
なのでこうした仮想通貨、電子マネーにとっては願ってもない追い風となっているわけです。
多くの人が感染し、死んでゆけば、不安や恐怖にあおられた人々の資金がこうしたウィルスの危険のない市場に流れ込んでくるのですから、世界中の人々が恐怖に陥るほど大喜びする人々もまたいるというわけです。
 いやはや…