私たちは『過ち』を繰り返しうる存在です

(校舎だより『FlyingSeeds』6月号より)

 G7サミットを広島で開催することについては、「広島を政治利用するな」という反対の声もありました。ウクライナのゼレンスキー大統領も来日し原爆慰霊碑に献花する感動的な画像が世界に配信されるその裏で、日米同盟やNATOとの連携、対ロシア参戦体制の強化が進められています。わざわざ「ヒロシマ」で軍拡の相談を大っぴらにするとは、何事か…。

 「原爆資料館」をG7と招待国、招待国際機関の15首脳陣が見学する、ということで、せめてもの意義があるはずと思いましたが、実際の見学の様子や何を見学したかといったことは一切撮影されず公表もされないというありさま。これでは本当に見学したのかも不明です。

 「原爆資料館」の展示物をきちんと見た者なら、どんなに想像力が貧しくとも原爆を投下された大地がどのような凄惨な地獄に(あぶ)られたか、実体験はできずとも言葉を失う経験は必ずできます。未見の方は是非一度は足を運んでほしい。

 慰霊碑には「安らかに眠ってください 過ちは 繰り返しませぬから」とあります。

 この主語は、東日本大震災の鎮魂歌「花は咲く」とは逆なのだろうと、今は考えています。
 「花は咲く」では「いつか生まれる君に 私は何を残しただろう」と、死者が、まだ生まれていない未来の子供たちを気遣う思いをつづっています。
 原爆慰霊碑は、死者たちに、まだ生まれていない未来の子供たちが、力強く告げている。残念なことに、今を生きている私たちは、「過ち」を繰り返しうる存在なのです。

 世界の権力者たちは、その道を着々と敷き、準備を進めています。あろうことか、日本がその先頭で旗を振ってゆこうとしている。教科書に載っている「日露戦争前」の戯画を思い出しましょう。大鍋で「韓国」という食材をぐつぐつ煮込んでいる巨漢(ロシア)に、刀を抜こうとしている小兵(日本)が近づく。その背後でタキシードを着た紳士(イギリスやアメリカなど)が後押ししている。

 原爆慰霊碑の前でG7とEU、欧州首脳陣の真ん中に立つ岸田首相が満面のドヤ顔でことさら胸を張って見せている図がこの戯画と相似形に重なって見えます。