息子24歳誕生日に寄す

息子へ
24歳誕生日おめでとう。

昔よく言われた。

「25歳までには、自分の顔に責任を持て」

よくも悪しくも自分の本質が、顔に現れる。つくりの良し悪しではなく、人格そのものが。
それを誰かのせいにするのではなく、自分が作りつつあるもの、磨きつつあるものとして、衆人環視のもとにさらすこと。
未熟未完成なのは当然至極。むしろ醜顔恥ずべしと自覚し恐懼できればひとまず合格。
無知蒙昧ではないということだから。

自己責任において衆目評価に堪えよ。
せっかく一処不在の旅を住みかとしているのだから、あらゆる境遇、経験を書物として魂の糧とすべし。

そうした膨大な書物・天の配剤を深く味わうためにも、
文字の書物を読め。

茫漠とうごめく知に形を与える。
それを咀嚼し反芻する。

「人はだれでも生涯に一本は小説が書ける」と、創作文学嫌いの恩師に言われたことがある。

もちろん自分の生きざまがテーマ。
軽薄な「個性」をひけらかす創作ではない。
已むに已まれぬ生命燃焼を、精神の血で綴ること。

ぶざまでもめざましくても、文章を紡ぐすべ持たねばそれはかなわぬ。
お前の場合なら、映画一本撮るに比すべきか。
本を読め。
古今東西に遍在する自分と邂逅うためにも。

Exif_JPEG_PICTURE