論語 顔淵第十二 四・五
子曰く、君子は憂えず懼れずと。内に省みて疚しからず。
死生命有り。富貴天に在りと。
君子敬して失うことなく、人と恭しくして礼有らば、四海の内皆兄弟なり。
君子何ぞ兄弟無きことを患えんやと。
【大体の意味内容】
先生はおっしゃった。「君子は、くよくよ悩んで心が病むことはない。失態や責任を問われることを懼(おそ)れて、自分を守るためにごまかそうなどともしない。自分の心の内を反省してみて、何ら人として恥じるべきことがないからである。
『人の死生は天命によるもの、富貴もまた天に与えられたもの』ということわざがある。
我々は宇宙の意思によって生かされていると認識すべきだ。
しかしそうした宇宙の意思こそが、自分の無意識の願いなのだ。
自分がかかわるすべてのことは、宇宙の意思によるものであるから、
すべてに敬意を払って真心を失ってはならない。
人に対しては恭しく礼を尽くせば、世界中の人々はみな自分の兄弟となる。
だから君子としては、自分に恭敬の足りないのは患えるべきだが、兄弟がないことを患えたりはしない。
【お話】
どんなに努力しても、頑張っても、我慢しても、結果的に失敗し、負けてしまうことはあります。
そんなことを何度もくり返してしまうことだって、あります。
それでも決してあきらめず、ふてくされたり他人せいにしたりせず、また怒られたり責められたりしても堂々と
正面から受けとめることのできる人が、本当に素晴らしい人ですし、
最強の成功者です。
確かに君子と呼んでいい。
そうやって自分の精神の真ん中に強くしなやかで粘りのある芯を造り続ける人は、
どんなことが起きても折れたりくじけたりへこんだりすることはありません。
すべての経験を、自分の糧(かて)として吸収し、生き様を鍛え上げてゆけます。
本当の敗北はない、不敗の人生を送れるのです。
君子とは、努力の達人・天才のことです。