仁者は必ず勇有り

子曰く、徳有る者は必ず言有り。
言有る者は、必ずしも徳有らず。

仁者は必ず勇有り。
勇者は必ずしも仁有らず。

【大体の意味内容】
先生はおっしゃった。
「徳(万物の生命を輝かせる力)を積んだ人には、その徳がにじみ出るような、善い言があるものだ。

しかし、流暢に善い言を発する人は、必ずしも徳のある人とは限らない。

仁者は人としてのあるべき生き方を優先するから、必ず勇があって、
我が身に不利や災難が及ぼうとも卑怯に堕ちることはない。

しかし勇者は時として自分の強さを誇って、自分ばかりか、他人の命まで粗末にすることもあり、
必ずしも仁者とは言えない。」

【お話】
「非暴力・不服従」を提唱した、インド独立の父マハトマ・ガンジー。

その理念を受け継いで「私には夢がある」と黒人差別社会の根絶を目指したキング牧師。

古くは、「和を以(もっ)て尊(とうと)しとなす」を唱え、権門勢家(せいか)の特権を否定した聖徳太子。

本当の仁徳を持った人々は、権力者たちからは疎んじられ、憎まれ、抹殺されようとしても、自分の信念を曲げず最後まで貫(つらぬ)く勇気を持っていました。

現代で言えば、『日本国憲法第九条』がこれに該当(がいとう)するかもしれません。

「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求(ききゅう)し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇(いかく)又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」

 戦わずして勝つ、

あるいは一見負けたようなありさまでも長い目で見れば本質的勝利を修(おさ)めている(「負けるが勝ち」)、

そんな知恵を出す道を、先人たちは選んできました。

私たちはどんな未来を選択するでしょうか。