一隅を挙げて三隅を以て反らざれば則ちまた復らざるなり

子(し)曰(いわ)く、憤(ふん)せずんば啓(けい)せず。悱(ひ)せずんば発(はっ)せず。一隅(いちぐう)を挙(あ)ぐるに、三隅(さんぐう)を以(もっ)て反(かえ)らざれば、則(すなわ)ち復(めぐ)らざるなり。

【大体(だいたい)の意味(いみ)内容(ないよう)】
先生(せんせい)はおっしゃった。「悱憤(ひふん)しなければ啓発(けいはつ)できない。つまり、怒(いか)りに震(ふる)え血(ち)も噴(ふ)き出(で)るときのような強(つよ)い志(こころざし)を発動(はつどう)し、伝(つた)えたい思(おも)いが言葉(ことば)にならず、歯(は)ぎしりしながら頭(あたま)をかきむしるほど、もだえ苦(くる)しまなければ、だれも到達(とうたつ)できなかった未知(みち)の世界(せかい)を啓(ひら)き見(み)ることはできないし、自分(じぶん)の生命(せいめい)の輝(かがや)きが発揮(はっき)されることもない。
この世界(せかい)という箱(はこ)の一(ひと)つの片隅(かたすみ)を与(あた)えられても、それほどまで奮励(ふんれい)努力(どりょく)することによって残(のこ)り三隅(さんぐう)(三(みっ)つの隅(すみ))の新境地(しんきょうち)へ到(とう)達(たつ)していかなければ、自分(じぶん)に与(あた)えられた世界(せかい)を一巡(ひとめぐ)りしたとは言(い)えないのである。」

【お話】
「自分がいま生きているということを、全身がひりひりするほどに実感する機会が少なくなってきているように思います。体中から汗が噴き出し、背中から湯気がもうもうと立つような思いで何らかの仕事に取り組んだり準備したり勉強したり練習したりするような、現実味(リアリティ)が感じられなくなっています。バーチャルな映像や動画、情報の洪水に飲み込まれて、自分の心身が主体的に生きられなくなってきています。自分の人生は自分で生きましょう。便利な道具に支配され、権力者やマスコミに洗脳されワンパターンの考え方にはめ込まれるのではなく、いろんなことに疑問を持ち、自分で調べたり考えたりする努力をしましょう。何かスポーツや芸術などの習い事や、受験などの、自分にとって大きなイベントがあるごとに、私たちは「一応の」努力をしますが、それをもっと命がけで、必死に努力すれば、予定していた以上の何かを得られることがあります。今自分がいる精神状態は、まだ世界の片隅の狭い範囲しか知らない精神状態なのです。しかも、何かとんでもないものに支配されているかもしれないし、誰かにとって都合のいい物の見方考え方行動の仕方を知らず知らずのうちに仕込まれた奴隷・家畜かもしれないのです。いきなりそう言われても、心当たりも見当もつかないでしょうが、まずは今自分が取り組んでいることを真剣にやり切ってみましょう。できるかできないかは関係ない。とことん努力することで、楽しさも味分えるし、思わぬことを神様が見せてくれたり教えてくれたり、出会わせてくれたりします。