3月3日雛(ひな)祭りの原型が「ひな流し」であることはご存知ですか?イザナギ・イザナミノミコトの国生み神話の最初に、「ヒルコ」というぐにゃぐにゃの死児を生んでしまう話があります。それを海に流してから国生みをし直しすという展開です。実は「雛(ひな)祭り」とは、この「ヒルコを海に流す」神事の再現なのです。つまり、「ひな祭り=死産・流産」という予(よ)祝(しゅく)です。
予(よ)祝(しゅく)とは前祝(まえいわい)のことですが、それは必ずしもプラスイメージの出来事ではありません。むしろマイナスイメージのことを先に経験させておく、愛娘(まなむすめ)に先に死産・流産を模擬的に経験させておいて、実際のお産の時には健(すこ)やかな生命が誕生することを祈るのです。
日本は、7年前の3月にとてつもなく大きな死産・流産をしてしまいました。そこからこの国がどう生まれ変わってゆくべきか、私たちに課された課題は今も重くのしかかっています。
「花は咲く いつか生まれる君に 私は何を残しただろう」
死者たちが、まだ生まれていない未来の生命たちを気づかうというこの名曲には、本当に心揺さぶられます。
あの時仙台で被災した一人のスケート少年もまた、多くの失われた命のため、またこれから生まれくる生命の豊穣(ほうじょう)のため、祈りを込めて舞い続ける誓いを立てました。陰陽師(おんみょうじ)安倍(あべの)晴(せい)明(めい)の呪力(じゅりょく)を体現すべく、映画『陰陽師』の主題曲に乗って、古代の狩(かり)衣(ぎぬ)装束(しょうぞく)を模したコスチュームであでやかに舞う彼のスケートは、スポーツとかオリンピックとかの枠を超えて世界中に深い感銘をもたらしました。羽生(はにゅう)結(ゆ)弦(づる)。羽(はね)を生(う)み弦(つる)を結(ゆ)う。辛(つら)い、我慢(がまん)の時をむしろ前向きに、自分の糧(かて)としてエネルギーを蓄(たくわ)え、ここぞというときに高らかに矢を放つように飛翔。見る者に勇気と感動を与えてくれました。
3月、受験生たちは最後の戦いに挑(いど)み、学修塾ダンデリオンは第1期のFlyingSeeds(フライングシーズ)(天(あま)翔(が)ける種たち)を送りだします。同時に、2年目に突入します。塾である以上は、生徒たちの成績を上げることも当然果たさねばなりませんが、それ以上に、私たちはどのような使命・天命を受けて未来を拓(ひら)くべきか、それぞれが真剣に追究するための温床にしたいと思います。
「求道者(ぐどうしゃ)、情熱、そして真摯(しんし)」。スピードスケート金メダリストの小平奈(こだいらな)緒(お)選手が自己を評するこの言葉は、そのまま「学修塾ダンデリオン」の理念でもあります。