熱狂的「ドリョク」論

(校舎だより『FlyingSeeds』11月号巻頭言)

ラグビーワールドカップの日本の躍進で、「日本文化としてのドリョク」が注目され始めました。
一日数時間のハードワークをほぼ毎日欠かさず実施する日本の子どもたちの「ブカツ」や、
「世界一の練習量」を誇る日本のアスリートたちの「文化」をさして、effortではなく「doryoku(ドリョク)」が、
一つのキーワードになってきたようです。
これまではどちらかというと「日本人の勤勉さ」と並行して、揶揄するニュアンスで使われていたようですが、
今や日本チーム驚異の変貌の秘密として、今後さまざまに評価されることになりそうです。

ダンデリオンを開校する前26年間の塾・予備校生活で、夏期講習100コマ以上の授業を受講する生徒は、大学受験生を含めても少数でした。
経済的事情もあり極端に少ない生徒もいたので、無用の格差を解消する目的で、
ダンデリオンでは月謝料金のまま「授業受けたいホーダイ」としました。
すると奇跡のようなことが起きました。

初年度に中3女子生徒の一人がいきなり170コマも学習し、その勢いで「努力」し続けた結果、
偏差値を10以上あげての志望校合格を果たしました。

するとその後は「夏期170」がスタンダードになってしまい、

翌年は170越えが3名、

今年は231コマという生徒が出現しました。

皆勤した場合で240コマなのでほぼMAXまで来たことになります。

100コマなら非受験の小学生でも達成してしまうというありさまです。

もちろん、努力だけして頑張っていればいいというものでもない、というのも事実です。

ハードワークだけでは思考が硬直してしまい、
同じミスやエラーを繰り返したり、
競技なら、相手から同じ戦術に何度も陥れられたりしがち。

柔軟な思考力を備えるには、
目先の焦点をずらしてみたり、
せっかく来た道を戻る、苦労して築き上げたものを壊してみる、など、
普通に考えて面倒で嫌なことをする気力や勇気も必要です。

「(ラグビー日本代表は)ドリョクだけでは南アフリカに勝てない」
と英国の記者に予想されていました。

結果その予言通りになりましたが、その記者はこうも言っていました。

「日本人の元来の性質である『勤勉さ』に加え、海外出身のHC(ヘッドコーチ)が注入した理論が合わさって、
この強い日本が出来上がった」と。

実際日本代表は最初、現HC(ヘッドコーチ)のジェイミー・ジョセフには反発していたそうです。
細かなプランのない、「自分たちで考える」プレーは日本人の最も苦手なこととして。

しかし負け続けながらも、次第に感触を得てきた、
確かに直(じか)にピッチに立つ自分たちでなければわからない勘(カン)が働き、
走るべきコースが閃光(せんこう)として見えることもある、と。

そうして彼ら自身の意識変革が進み、飛躍したのでした。
頭脳と「努力」の翼を羽ばたかせて。

「ドリョクだけでは足りない」
のではなく、

「理論だけでは足りない、熱狂的なドリョクがなければ。」と言うべきなのでしょう。