（校舎だより10月号より）
9月19日のNHK『クローズアップ現代』はロシアでの「愛国教育」を特集しました。昨年9月から小中高校で「大事な話をしよう」という授業が導入され、週に1回全生徒の受講が義務付けられました。テーマは「家族」「演劇」「音楽」など、戦争とは無関係だが、ロシアの偉大さを強調し、「大祖国戦争（第2次大戦）」「宇宙飛行士」「医師」等祖国へ命をささげる人間が英雄になれると、子供たちを洗脳する内容です。
この愛国教育の予算も昨年の5倍になり、高校では女子生徒までもが自動小銃や手りゅう弾等を扱う「軍事教練」をされていました。eスポーツトレーニングの趣で無人機操縦の「訓練」も受けます。カッコよく楽しい授業を装って、子供達が何の抵抗もなく誇りをもって戦場へ出て行くメンタルが養成されています。
この授業をボイコットしたことで校長から「密告」され、警察の取り調べを受けたという少女と母親がNHKの取材に答えていましたが、外国にいながら本音を吐きません。恐怖に縛られてしまっているのです。
「密告」は、この方針に批判的な教師も対象です。要するに政権の側に立って行動すれば何をしても許され、不安や不満を解消する捌け口として対立する相手を「密告」し陥れ、権力者に承認され喜ぶ。実際出世する者もいます。まさにジョージ・オーウェル『1984年』のディストピア。
『はだしのゲン』で描かれていた第二次大戦中の日本社会を彷彿させますが、現代日本の明日の姿を見る気色悪さを覚えました。NHK自身が政権忖度としか思えない数々の歪曲報道を繰り返す。コロナワクチン接種後に死亡した人々の為に薬害訴訟を起こしている遺族達を取材しながら、ワクチンには全く触れずコロナによって亡くなられたかのような放送をし、ネットで大炎上して一応の謝罪をしていました。
が、そのネットでは、自民党の議員達、特に稲田朋美氏が日本会議の集会で壇上から「国民のための政治などというのは間違っている」「自分の国を守るために血を流す覚悟をしなければならない」と高らかに言い放ち、拍手喝采浴びている動画が炎上している事実は全く報道しません。民放も。これではロシアとどこが違っているのでしょうか。
2006年の日本の教育基本法改定では第2条第5項に「我が国と郷土を愛する」ことを強要する「愛国条項」が盛り込まれました。敗戦の教訓で、教育からは国家権力を排除したはずなのに、政治が教育に介入しやすくなる改悪を推進している。ロシアだけでなく日本の子供達も「愛国教育」に現在進行形でさらされているわけです。
ロシアにはこんな格言もあるそうです、「愛国主義は悪党たちの隠れ蓑」。