三軍も帥を奪うべし。匹夫も志を奪う可からず

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子(し)曰(いわ)く、
三軍(さんぐん)も帥(すい)を奪(うば)うべし。匹夫(ひっぷ)も志(こころざし)を奪(うば)う可(べ)からず。
歳(とし)寒(さむ)くして、然(しか)る後(のち)に松柏(しょうはく)の彫(しぼ)むに後(おく)るるを知(し)る。
知者(ちしゃ)は惑(まど)わず。仁者(じんしゃ)は憂(うれ)えず。勇者(ゆうしゃ)は懼(おそ)れず。

【大体の意味内容】
先生はおっしゃった。「三万を越える大軍であっても、一致団結していないならばその大将を討ち取って撃退することができる。しかし地位も金もないたった一人の人間であっても、その者が強い志を抱いていれば、何人たりともその想いを奪うことはできない。
十二月の寒さの中で他の草木の葉が凋落するときになってはじめて、松や柏が厳寒に独り青々と生きているのがわかる。厳しい状況で脱落する者が多い中で、それに耐えて立つ者こそ本物なのだ。
己を知りよく修める者は、孤立して味方する者がなくても、迷うことなく我が道を行く。
他人への深く寛い思いやりを持つ者は、私個人のことで憂い悲しむことはなく、息とし生けるものや、未来の子どもたちのために自分の生命を燃焼させる。
全身から湧き出る愛に満ちた本当の勇者は、たとえ自分の失敗や過ちを責められることになってもそれを懼れ回避することなく、我が身を滅ぼすとも愛するものを護る。」

【お話】
鋼鉄のように頑丈な精神の持ち主ばかり語られていて、現実の自分とはあまりにもかけ離れすぎていますが、
それでもこうしたイメージ(映像)を心に焼き付け、
折に触れて思い起こすことは無意味ではないでしょう。

三万の大軍対一人のぼろをまとった人。

寒風の中、凛として立つ常緑樹。

真っすぐ道を歩む姿。

「いつか生まれる君に私は何を残しただろう」と思いやる心。

自分を取り繕うことなく笑って矢面に立つ勇気。

すべてほど遠いですが、一歩半歩でもそれに近づこうと努力し続けることで、何か新しい風景も見えてくるのではないでしょうか。