才は猶剣の如し

(授業前の素読 言志四録9)

凡(およ)そ人と語るには、須(すべか)らく渠(かれ)をして其の長ずる所を説かしむべし。
我に於いて益有り。

凡そ事吾が分の已(や)むを得ざる者に於いては、
当(まさ)に之を為して避けざるべし。

已むを得べくして已めずば、これ則ち我より事を生ぜん。

才は猶剣の如し。
善く之を用うれば、則ち以て身を衛るに足り、
善く之を用いざれば、則ち以て身を殺すに足る。

【大体の意味内容】
人と話しをするときには、その人の良い点を見つけて、詳しく聞き出すのがよろしい。
その人はこちらに好意を抱くし、また実際にその人の良い点を詳しく学び取ることもできるので有益である。

何事においても、自分の本分としてしなければならないことは、敢然とこれを為して、避けてはいけない。
(結果はどうであろうと、それは必ず自分にとって有意義なこととなる)。

逆に、しなくてもよい余計なこと、有害なことを、やめないでし続けた場合は、
自分から愚かな過ちをしでかすものだ。

誰にでも何らかの形で必ず備わっている才能というものは、剣のようなものだ。

これの本来の働きに従って逆らうことのないように作用させれば、いかなる場合も身を衛ってくれる。

しかしせっかくの才能を、己の欲望ばかりを満たすために悪用すれば、かえって我が身を殺すことになる。

【お話】
いま、自分が置かれている状況は、たとえ不本意なものであったとしても、
何か必要があって、「この状況」にあるのだと思います。

もちろん、それから逃げた方がよいこともあります。無理しすぎないことも大事です。

よく考えてみて、この状況から逃げずに乗り越えてゆくことが、
自分にとってためになると考えられれば、逃げずに立ち向かいましょう。

たいていの場合、面倒で辛いことから逃げようとしたり、何とかごまかして適当に片付けようとしたりすればするほど、苦しく辛い状況が延々と終わることなく続きます。

自分を向上させるチャンスとして、
進んで苦しみぬこうとする覚悟で丁寧に対処した方が、
結果的に思ったより楽で、早く、うまくゆきます。

だまされたと思って、そういう覚悟を決めて、
ガッツを出してみましょう。