みなさんは、自分の心がご先祖さまから遺伝しているのではないか、と感じたことはありませんか?
「自分は自分。親やきょうだいとも違った個人で、個性的な存在」
という、生物学的な常識や、主体的な自我からはそう信じつつも、
不思議な一体感を、赤の他人と共感したり、昔の人への共鳴から、
実感したことはありませんか?
阪神・淡路大震災や、中越地震、東日本大震災、熊本地震、そのほかの大きな災害の被災者たちが、
決して暴動や犯罪を犯すことなく助け合い譲り合う姿に世界中が驚愕しました。
「大自然の神々」への畏怖と、「情けは人の為ならず」の心意が、特に教わったわけでもなく自然と作用していました(共時的心意伝承)。
皆さんは、変身ヒーローが好きですよね。ウルトラマン、仮面ライダー、変身戦隊、セーラームーン、プリキュアなど。
実は、
こうした変身(本性示顕)は昔から特別な意識を持った場面でした。
ヤマトタケル〔=白鳥〕
鶴の恩返しのおつう
人喰い山姥(やまんば)
つし王丸〔=金焼(かなやき)地蔵菩薩〕
助六〔実は曽我五郎〕
などです。(通時的心意伝承)
時を超えて、同じようなイメージを共有する。別に教わったわけでもないのに。
遺伝子の中に、そうした共通心性を生じさせる物質があるのかどうかはわかりませんが、
少なくとも、
遺伝しているかのように、心が反応したり、ふるまったりすることは、逃れようのない事実です。
この問題について、かつて2年にわたって雑誌に連載していたことがあります。
2018年4月に書籍としてまとめました。
私家版の非売品として、書店での販売はせず、大学や自治体図書館等に献本しています。
まだ残部に余裕がありますので、ご希望の方には無料でお届けします。
ご指定の住所(ご自宅でなくても結構です)をお知らせくださればお送りします。
コチラから必要事項を入力し、「お問い合わせ内容」の欄に
「心意伝承送付希望」
と、この文字列をコピーし貼り付けてください。
以下全文掲載しますので、ご興味のある方はどうぞご一読ください。
お勧めの順序としては、
第一回
をお読みになって、さらに読んでみようという気になりましたら、
第十二回
以降をお読みいただけるとよいでしょう。そこまでの堅い執筆態度からようやく解放されて、自由に書けるようになった転換点でした。
最後までお読みいただいて、まだ興味をお持ちでしたら、
第二回以降
の、飛ばした部分をお読みいただければ幸いです。
心意伝承―遊働世界に生きる―
(學燈社『國文學』平成19年10月【2007年第52巻12号】~平成21年6月【2009年第54巻8号】連載)
第一回 心意伝承とは何か① 衝撃の初講 【全文】
*天地初発 *ウルトラマンの誕生 *邂逅
第二回 心意伝承とは何か② 兆・応・禁・呪の心意現象―柳田国男の志― 【全文】
*無意識の継承 *三部分類 *兆・応・禁・呪
第三回 心意伝承とは何か③ 道徳発生の源流―折口信夫の気概― 【全文】
*民間伝承の性能分類 *「心意現象」と「心意伝承」 *気概としての道徳
第四回 心意伝承とは何か④ トランスフォーメーションという原風景―上原輝男の生命燃焼― 【全文】
*稚児・童子・若 *生命指標(ライフ・インデックス)としての稚児 *トランスフォーメーション
第五回 夢の在りかを覓(もと)めて-境界認識の原像-① 神託による聖地発見 【全文】
*生活空間の文化史 *意識世界としての境界領域 *夢と現実のコンステレーション *夢と現実のトランスフォーメーション
第六回 夢の在りかを覓(もと)めて-境界認識の原像-② 山の出現・躍動 【全文】
*霊界めぐりとしての観光 *あたらしき山のあれまくをしも *神体示現としての「あれ」 *遊働する世界
第七回 夢の在りかを覓(もと)めて-境界認識の原像-③ 「聖域」たらしむるモノたち 【全文】
*夜は力 *長谷寺炎上という霊験 *ぬばたまの形とはたらき *馬の音ぞする *夢と射目と馬と狩とのコンステレーション *冥界に籍を置く
第八回 夢の在りかを覓(もと)めて-境界認識の原像-④ 四至(しいし)結界の呪術 【全文】
*聖域は生命指標(ライフ・インデックス)のコンステレーション *日本人の生活世界の知り方 *四至(しいし)の唱えあげは呪術である *源平騒乱を引き起こす夢 *曽我兄弟、鎌倉幕府を滅ぼす!? *生き過ぎたりや廿五(にじゅうご)。大鳥一兵衛、江戸幕府を虚仮(こけ)にする *曽我五郎、日本六十余州を引き寄せる *山が夢をもたらす演出 *生活空間の安定に必要なのは世界遊働のイメージ
第九回 夢の在りかを覓(もと)めて-境界認識の原像-⑤ 究極の風景との邂逅 【全文】
*夢は現実生活の根拠 *高天原の風景を探せ *猶(なお)天上にある儀(ヨソヲヒ)のごとし *「昔見し」という未来 *魂は月光に惹(ひ)かれ、恋は忘れ水に果てる *月と馬と星の信仰 *宇宙の思いを写し取る
第十回 山水遊泳を映す生活① 東山水上行 【全文】
*宇宙放浪という日常を知って *道元は全身の細胞で考える!? *山は水上を行く *京都祇園祭の生命指標(ライフ・インデックス)は駒形稚児(こまがたちご) *宇宙ステーションとしての久世
第十一回 山水遊泳を映す生活② 青山常運歩 【全文】
*中洲と青山のコンステレーション *世界転換(トランスフォーメーション)は物の生命力を思い知ること *水死体が流れつくところ *河原という聖域の奥行 *青山祭りは天皇霊更新のトランスフォーメーション *青山運歩が日常である
第十二回 山水遊泳を映す生活③ 水害ハザードの神性 【全文】
*日本のリビングルームは枯山水 *世界転換(トランスフォーメーション)の装置 *なぜ日本人は水辺の低地に集住するのか *日本三景は水害ハザード地帯 *輪中地帯にも弥生時代の生活はあった *「戦争を知らない子どもたち」への危惧
第十三回 山水遊泳を映す生活④ 天壌無窮のエロス 【全文】
*流れ山サーフィン *カミへの求愛生活(エロース)を考える *浮島の図がなぜ「女体権現」なのか? *山と月と水の曼陀羅 *漂流する女の水死体 *血まみれ泥まみれの女 *ウルトラセブンの”濡れ場” *天の血の饗宴
第十四回 玉もの鎮石(しずし)考① 出雲神宝幻視行 【前編・後編】
*「私」の誕生 *神の人形(ひとがた)としてのヒトツモノ *「私」たちの宝意識を考える *「出雲神宝事件」の構成 *「出雲神宝」の正体は不明のままである *小児の託宣のコンステレーション *水泳御魂(みくくるみたま)の正体 *月のタマをのむという心意伝承 *「出雲神宝」夢想
第十五回 玉もの鎮石(しずし)考② 人と海と陸(くが)の萃点(すいてん) 【前編・後編】
*なぜ氷上が切り札になるのか *日本一低い中央分水界 *氷上は崇神紀の伝承に無関心 *千年の斎国 *磯部に占拠された氷上 *日本海―瀬戸内海交流の大動脈「氷上回廊」 *卑弥呼は出雲出身だった!? *氷上を制するものは海を制する *混沌こそがいのちの輝き
第十六回 玉もの鎮石(しずし)考③ 断層に立つ大王 【全文】
*モノの放浪 *出雲梟帥(いずもたける)の佩(は)ける太刀 *大和はいかにして強国になりえたか *国産製鉄はどこまでさかのぼれるか *祭りとしての原初製鉄の可能性 *資源の宝庫・中央構造線 *「鉱業部民」の存在と活躍 *科学的合理性と信仰は同源 *戦う「大王」から中心へと排除される「天皇」へ
第十七回 玉もの鎮石(しずし)考④ 海翔(あまが)ける人々 【前編・後編】
*トランス・パシフィックby倭人 *「四柱の論証」 *太平洋「天岩戸神話」分布 *丸木舟最強説 *ポリネシアンの航海術 *われらは「一つのモンゴロイド」 *海人族は異人種のるつぼ *北極星の「水泳御魂(みくくるみたま)」 *”天皇島”幻想 *海人族は錬金術師 *神事のなかに生活の場を見つける
第十八回 尽生成死譚(じんせいじょうしたん)① 闇にぬらめく 【全文】
*いのちはどのように輝くのか *闇に垣間見えるモノこそ本質的 *生と死のコンステレーション *風景の解体は死をも奪うこと *魔星こぞりて世を驚かす *「神剣」小考 *生死一如という神域
第十九回 尽生成死譚(じんせいじょうしたん)② 死に場所で誕生を祝う 【全文】
*「型破る」ための教育を求めて *「人間は生きざまを問われる動物である」 *髪の毛の変化は人格変換を表す *新人交感の相としてのバサラ髪 *死と誕生を表す母衣(ほろ)武者 *祝祭空間への転換 *「死」に至ろうとするコンステレーション
第二十回 尽生成死譚(じんせいじょうしたん)③ この世とあの世をつなぐ 【全文】
*自殺する人は履物を脱ぐ *この世とあの世との関係を結ぶ *親の敵は「善知識」 *命のやり取りをする”逆縁”も、最高の出会い
最終回 尽生成死譚(じんせいじょうしたん)④ 虚空にさらされて生きよ 【前編・後編】
*特攻隊員はなぜ反乱しないのか *花を振って送る *人形を抱く特攻隊員 *空翔ける恋 *命を継ぐもの *独白(モノ・ローグ)~空のよろめきに遊び続ける