草結び〔=奇(く)し産(む)す霊(ひ)〕

「草結び(くさむすび)」
を、
校舎だより『Flying Seeds〔天翔(あまが)けるタネたち〕』巻頭言のタイトルにします。

私、本荘の独断と偏見や妄想などをつづるものです。

辞書を引くと、

①「草のいおり」を作ること。
②(道しるべに草を結んだことから)人に先だってことを始めること。くさわけ。草創。
③縁結び。結納。 などとあり、

この動詞形の「草結ぶ」だと、

①草の葉や茎を結んで、永久に変わらないことを誓う。
②草の茎と茎とを結び合わせて、事の成否を占う。
③草を結んで草原の道しるべとする。
④旅で野宿をする。旅寝する。
⑤草庵を営む。

などの意味が出てきます。

どの意味もちょうどこの塾にピタリのような気がします。

質素で飾らないイメージながら、
実は高い強度や旺盛な生命力を誇る雑草たちの、
匂やかでみずみずしい色彩に基づく価値が

遺憾なく表現されているように思います。

最初は、
吉田松陰が『孟子』から援用して日本改革のコンセプトにした

「草莽崛起(そうもうくっき)」

が念頭にありました。

利権にしがみつく権力者ではなく、
雑草のような名もない人々が立ち上がって、今の世を改革し未来を切り拓くべき。

そうした考えで「松下村塾」に集まる若者たちと共に学び探究し、
明治維新の中心的な人材を輩出して行った。

そのことが、私の妄想をも刺激していました。

けれど、「草莽崛起(ソーモークッキ)」という肩ひじ張ったような字体や音が、
今一つこちらには合わないような気がして、

もう少ししなやかで自然体になれるような言葉はないかな、それでいて、
言わんとすることは「草莽崛起」に匹敵するような…と探していました。

そうして、たまたま「草結び」という言葉と出会いました。

「草(くさ)」は「奇(く)し(=神々しさ)」に通じます。

「種」も「くさ」と訓ぜられますから生命力を表す。

「結び」は、
ひもを絡ませるよりもまず

「おむすび」とか
「露を結ぶ」というように、

「産(む)す霊(ひ)」からきています。

魂のこもった威力あるものを生み出す

 

ということです。

ダンデリオンの若草たちが年々歳々、小さな種から次第に大きな種を結んでゆけるよう、
丹精込めてはぐくんでまいります。