事を先にして得るを後にするは、徳を崇くするに非ずや

(論語28 顔淵第十二 二一)
子曰く、事を先にして得るを後にするは、徳を崇(たか)くするに非(あら)ずや。
其の悪を攻めて、人の悪を攻むること無きは、慝(とく)を修むるに非ずや。
一朝の忿(いかり)に、其の身を忘れて、以て其の親に及ぼすは、惑(まど)いに非ずやと。

【大体の意味内容】
先生はおっしゃった。
「利益を得るよりも先に、行うべきことを真摯に実行し、努め励むことは、徳を崇くすることにならないだろうか(いや、なる)。
自分の悪を攻めて改めようとし、他人の悪を攻めないのは、自分の中の慝(かく)れた悪を修める方法ではあるまいか。
一時の怒りに我を忘れて、禍(わざわい)を自分の親にまで及ぼしてしまうのが、「惑(まど)い」ではないだろうか。」

【お話】
金もうけを目的としているように見えるビジネスの世界でも、ほんとうに成功している人はこの孔子の教えを模範としています。

人として誇れる使命を自覚し果たすことなく、
やたらともうけることばかり考えたり、他人をだましたり陥(おとしい)れてでも自分ばかりいい思いをしようとする者は、
必ず悲惨(ひさん)な末路(まつろ)をたどる。

このことは、ビジネスの世界だけでなく、スポーツでも芸術でも学問研究や受験でも、どんな場合にもあてはまります。

スピードスケート、平昌オリンピック金メダリストの小平奈緒選手が、自分に課している理念が

「求道者(ぐどうしゃ)、情熱(じょうねつ)、真摯(しんし)」

だそうです。

実際彼女は、自分がオリンピック記録を出した後のレースが始まるとき、
客席の日本人応援団が大騒ぎするのを、静まるようにと制しました。

これから自分を破るかもしれないライバルが出るレース、それを邪魔せず、最大限力を発揮してもらうことを優先しました。

これが「崇(すう)徳(とく)(とくたかし)」です。

だれもがその努力にふさわしい戦いをすべきで、メダルはその結果誰かの手に渡るものにすぎない。

尊重すべきは過程であり、「戦い」という熱い人間関係を結ぶ「仲間」全員の完全燃焼である。

「金メダルは名誉なことでうれしいが、メダルを通してどのような人生を生きていくかが大事」

とも小平選手は言います。

蓋(けだ)し名言(めいげん)です。

テストや受験でもそうです。

結果よりも、どのような努力をしてきたか、どのように努力し続けるかが最も重要なのです。
そのことが、その人のその後の人生を直接創(つく)っていくからです。

「結果を出すためには手段を選ばない」と卑怯(ひきょう)な行動までとってしまっては、

卑怯(ひきょう)な人生を歩み続け腐(くさ)り続けるしかありません。

最強の敵こそ、最良の友として、尊重する、

そんな人生で、輝いてください。