2018年を迎えます。受験生たちはいよいよ本番に突入します。この時期に若者たちが一種の通過儀礼のようにして試練を受け、新たなステージに立つための資格を得るのは、実は日本人の季節感にとてもマッチしたシステムといえます。「資格」と書きましたが、言ってしまえば「霊格」の昇格を期したものなのです。
お正月に「お年玉」をもらいますね。これは本来は「稔(とし)魂(だま)」で、その年の稔(みのり)である新米に付着した神霊のことです。今は11月15日を「勤労感謝の日」としていますが、この日は元来『新嘗祭(にいなめさい)』と言って、新米を神々にお供えし、天皇もそれを食べる重要な祭祀(さいし)が行われます。こうして神霊の宿ったお米で年末にもちをつき、正月にその餅を食べることで人間も、1年間パワフルに生きるための「御神威(みいつ)(フォース)」を獲得するわけです。
この「稔(とし)魂(だま)」が転じて「年(とし)魂(だま)」となり、つまり「年の魂」を摂取したということで、元旦に全日本人が1歳「年(とし)」を「取り」ました。「数え年」で年齢を数えていた時代は、実は『誕生日』に年を取っていたわけではないのです。
「年(とし)魂(だま)」が「お年玉」とも表記されるようになったものだから、十円玉や百円玉で子どもたちへのお祝い表現をするようになり、現在のような、お札で渡す形になりました。そのうちメールに電子マネーを添付して送信するようにもなるのかもしれませんね。
こうしてゲットした「年魂(フォース)」の威力を発揮する機会として、現代においては受験があると考えればわかりやすいです。「試験」という語も「験(しるし)(兆候・サイン=神霊(しんれい)示顕(じげん)のありさま)」を「試(ため)す」という原義を持っています。受験生諸君は、これまでの努力を、周囲の人々の応援や願いがこもった「年魂(フォース)」で霊的に「威力増強(ドーピング)」して、本番を戦ってください。この試練・通過(イニシエ)儀礼(ーション)を乗り越えることで、君たちは更なる高い舞台(ステージ)に立つための霊格を備えることになるのです。
一見、何の役に立つのかよくわからないような受験勉強も、人としてのグレードアップを図るための筋トレであり、入試それ自体が格上げの装置となっています。少なくとも、極限まで努力すれば、かえってその中に楽しさや感動が見えてくるものです。
楽天道(楽しむは、天の道)。未知の自分との邂逅(であい)も、あります。