「親になる」という命がけ

 中3の生徒さんに勧められて、『下剋上受験』(産経新聞出版)を読みました。
久しぶりに全身が熱くなるほど感動しました!(テレビドラマのほうもそのうち見てみたいです)

著者の「桜井信一(仮名)」さんと、ご両親、そして奥さんも中卒で、社会的には何かと不自由することも多く、
また娘の「佳織ちゃん」は四谷大塚の全国テストで、最下位グループに入っていたそうです。

いろいろ考えた末、娘の人生の先行きが明るくないのは自分の責任と思い定め、
責任ある「親になる」ため、佳織ちゃんに中学受験を勧めます。

それも最難関「女子御三家(桜蔭・女子学院・雙葉)」のひとつ、桜蔭学園志望生として。そのための覚悟と実践がものすごいのです。すべての親御さんに知ってもらいたいポイントです。

中学受験塾に入れても、そうした難関突破のための特訓コースには入れてもらえないので、
一念発起して自分が一緒に勉強するという「親塾」にしてしまいます。

文字通り、お父さんも、仕事から帰ったら娘と一緒に勉強。参考書問題集ドリル過去問など、すべて一緒に学び、できるようになって、桜蔭にチャレンジしようというのです。

その過程で次々と厳しい現実を思い知り、何度も折れそうになりながらも、すさまじい執念で努力と工夫を積み重ね、お父さんは精神的な疾患とも戦いながら、十分戦えるレベルにまで何とかたどり着きました。

私もこの業界は長いので、お父さんの実践記録に嘘はないのがよくわかります。

自分は娘の肥やしで終わってよいから、娘には幸せな人生を歩んでほしい、ひたすらその一念で、

佳織ちゃんの小学生としての楽しみをほぼ奪う代わりに自分も一切の娯楽を棚上げして、

あらゆる面において佳織ちゃんに同行し続けたのです。

入試当日の、桜蔭学園構内での最終ミーティングの場面は圧巻。

お父さんが佳織ちゃんに

「ここまで連れてきてくれてありがとう」「お前はお父さんの誇りだ」

とひたすら感謝する形で励まし、

佳織ちゃんも「桜蔭を受験できてうれしい」

という言い方で感謝の気持ちを示します。

大いに泣けました。

結果は不合格で、ほかの上位校に受かってそちらに通い、現在は高校生になっているそうです。

お父さんはズタズタになった心身の治療をしながら、講演活動などにも追われているとか。

この本は、中学受験するしないにかかわらず、生徒さんたち、とりわけ保護者の皆さんにぜひ読んでいただきたいです。

「親である」のではなく、

命がけで「親になる」ために…